就労継続支援A型事業所を開設するには、人員基準・設備基準・運営基準を満たし、都道府県や市町村の指定権者から認可を受ける必要があります。本記事では大阪市での指定申請について解説します。
就労継続支援A型事業所指定申請の流れ

(大阪市の例)
指定要件
- 設備基準を満たした物件を確保していること
法令に基づく設備基準を満たした物件の準備が必要です。
- 必要な人員を揃えていること
指定基準を満たすためには、所定の職員を揃えておくことが求められます。
- 運営基準を満たしていること
省令に定められた運営基準を満たしておく必要があります。
- 法人格を有していること
申請者は法人格を有する必要があります。種類は問われません。
定款について
法人設立時に作成する定款の目的には、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく障害福祉サービス事業」などと記載する必要があります。自治体の手引きなどで定められた文言を使用しない場合、定款の訂正を求められることがありますので注意が必要です。
指定基準
就労継続支援A型の指定を受けるためには、以下の基準要件を満たす必要があります。基準は「人員基準」「設備基準」「運営基準」の3つの観点から定められています。
人員基準
◆従業者の配置
1.職業指導員:1人以上
2.生活支援員:1人以上
*職業指導員、生活支援員のいずれか1人以上は常勤
職業指導員及び生活支援員の配置総数
常勤換算方法:利用者数 ÷ 10 以上
(例:利用者数 30人の場合 → 30 ÷ 10 = 3人以上の配置が必要)
◆サービス管理責任者の配置
利用者数 60人以下:1人以上
利用者数 61人以上の場合:1人 + 利用者数が60人を超えるごとに40人ごとに1人追加
◆管理者の配置
原則として、管理業務に従事する者を1人配置すること。 他の職務との兼務可(管理業務に支障がない場合)。
資格要件
◆管理者
次の1~4のいずれかを満たす者
- 社会福祉主事資格要件に該当する者(同等以上として社会福祉士、精神保健福祉士等)
- 社会福祉事業(社会福祉法第2条に規定する第一種・第二種社会福祉事業)に2年以上従事した経験のある者
- 社会福祉施設長認定講習会を修了した者
- 企業を経営した経験を有する者
◆サービス管理責任者
次の1.2のいずれも満たす者
- 障害者の保健・医療・福祉・就労・教育の分野における直接支援・相談支援などの業務における実務経験が3年~8年。
- 相談支援従事者初任者研修(2日過程)修了
設備基準
◆訓練・作業室
訓練または作業に支障のない十分な広さを確保し、必要な機械器具を備えること。
(大阪市の場合、面積要件はありません。)
◆相談室
室内の談話の漏洩を防ぐために、間仕切り等を設置すること。
◆洗面所・便所
利用者の特性に応じた設備を整えること。
◆多目的室
サービス提供の場として、利用者の食事や談話の場などに利用できる空間を設けること。
◆最低定員
通常の最低定員:10人以上 (多機能型も同様)
雇用契約締結利用者10人以上
雇用契約未締結利用者は、利用定員の1/2以内かつ9人以内
雇用契約未締結利用者とは?
就労継続支援A型事業所を利用しているものの、事業所との雇用契約を結んでいない利用者を指します。通常、A型事業所では利用者と雇用契約を締結し、最低賃金が保証される形での就労が基本ですが、特例として雇用契約を結ばずにサービスを提供できる場合があります。この特例は、利用者が現時点で雇用契約を結ぶことが難しい状況にある場合に適用され、将来的な雇用契約への移行を前提とした支援として認められています。
運営基準
個別支援計画の作成、サービス提供の記録、利用者負担額の管理、安全・衛星管理、苦情対応、事故防止などが含まれます。
その他の法令の遵守
- 建築基準法に適合していることの確認
- 消防法に適合していることの確認
- 浸水想定区域と土砂災害警戒区域の確認
- 近隣住民等への説明
- 駐車場の確保
- 事業所において利用者に昼食等を提供する場合、管轄の保健所に確認
申請書類
◆事前協議に必要な書類
- 事前協議書
- 従業者の勤務体制及び勤務形態一覧表
- 組織体制図
- 経歴書(管理者、サービス管理責任者)
- 平面図
- 採光・換気の基準を満たしていることが確認できる書類
- 収支予算書
- 事業所で行う予定の事業の作業量積算根拠
- 事業所で行う予定の事業が請負の場合は、請負契約書のひな型
- 開設計画について
◆申請に必要な書類

(大阪市ホームページから引用)
就労選択支援による影響
就労選択支援は、障がいのある方が自分に合った働き方を選択できるよう支援する新しい制度です。2025年10月から開始される予定で、就労アセスメントを活用し、本人の希望や適性に合った選択をサポートします。2027年4月以降、新たに就労継続支援A型を利用する場合は、原則として就労選択支援を先に受ける必要があります。就労選択支援の結果をもとに、A型の利用が適切と判断された場合、正式に支給決定を受けて利用開始されます。
まとめ
就労継続支援A型の指定申請には、人員・設備・運営基準の適合が求められます。本記事では、申請に必要な条件を詳しく解説しました。適切な人員配置の基準、設備の確保、運営基準の遵守、法人格が必要となります。申請準備には多くの確認項目があり、準備する書類も膨大にあります。円滑な手続きを進めるために専門家のサポートを活用することをおすすめします。申請にお悩みの方はお気軽にご相談ください。