障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスには、就労移行支援、就労継続支援A型・B型、就労定着支援の4種類があります。このうち、就労継続支援は、障害者が継続して働ける環境を整えるためのサービスで、A型とB型の2種類に分かれています。本記事では、就労継続支援A型について詳しく解説します。
就労継続支援A型とは?
一般企業への就職が難しい障害のある方に対し、雇用契約を結んで働く機会を提供する障害福祉サービスです。最低賃金が保証された給与を受けながら、生産活動に従事できる環境が整えられています。雇用契約に基づく安定した収入と支援を受けながら、継続的な就労を目指すことができます。
対象者:
企業等に就労することが困難な者であって、雇用契約に基づき継続的な就労が可能な者
- 就労移行支援事業を利用したものの、企業等の雇用につながらなかった者
- 特別支援学校を卒業後、就職活動を行ったものの、企業等の雇用につながらなかった者
- 企業等を離職したなど、就労経験があるが現時点で雇用関係にない者
*65歳以上の者については、65歳に達する前の5年間、引き続き障害福祉サービスに係る支給決定を受 け、かつ65歳に達する前日までに就労継続支援A型に係る支給決定も受けた者に限る。
作業内容:
事業所の方針や利用者の特性に応じて、多様な作業が提供されています。
- 軽作業:商品の仕分け、袋詰め、箱折り、ラベル貼りなど
- 食品関連:パンやお菓子の製造・販売、弁当の盛り付け、食品の袋詰めなど
- 清掃業務:宿泊施設やオフィスの清掃、駐車場の草取り、車両の洗車など
- 衣類関連:クリーニング作業、縫製、Tシャツのデザイン・販売など
- 農作業:野菜や花の栽培・収穫・販売など
賃金:
就労継続支援A型における賃金は、雇用契約に基づいて最低賃金が保証される点が特徴です。賃金は一般企業と同様に労働時間に応じて支払われ、社会保険への加入も可能です。
令和5年度平均賃金 86,752円
利用期間:
就労継続支援A型の利用期間には制限がありません。一般企業への就職を目指しながら、雇用契約を結んで働くことができるため、契約が続く限り利用可能です。ただし、雇用契約が有期契約の場合は、契約更新の有無によって利用期間が変わることがあります。
利用時間:
勤務時間は事業所ごとに定められています。4時間以上4時間30分未満が一番多く、約過半数を占めます。

(厚生労働省資料より引用)
利用料:
就労継続支援A型の利用料は原則としてサービス提供費用の1割を利用者が負担する仕組みになっています。ただし、世帯の収入状況によって負担上限額が設定されており、実際の支払額は上限を超えることはありません。

(厚生労働省ホームページより引用)
就労継続支援A型の事業所・利用者の推移
就労継続支援A型の事業所数と利用者数は、緩やかな増加傾向にあります。これは、障害者の雇用機会を確保するための制度としての認知度向上や、政策的な支援の強化が影響していると考えられます。


(厚生労働省 就労継続支援A型の状況について R6.11.14 より抜粋)
その他の就労系障害福祉サービス
就労継続支援B型とは?
一般企業での雇用が難しい障害者のうち、過去に雇用されていたものの年齢や健康状態などの理由で継続勤務が困難になった方や、就労移行支援を受けても一般企業での雇用に至らなかった方を対象に、働く機会や職業訓練を提供します。この支援では雇用契約を結ばずに働く形態となり、生産活動の対価として工賃が支払われます。利用者は自分のペースで働きながら、就労に必要な知識や能力を向上させるための支援を受けることができます。
就労移行支援とは?
通常の事業所への雇用が可能と見込まれる障害者を対象に、生産活動や職場体験の機会を提供するとともに、就労に必要な知識や能力の向上を支援します。さらに、求職活動のサポートや適性に応じた職場の開拓を行い、就職後の職場定着を図るための相談や必要な支援を実施します。
就労定着支援とは?
生活介護、自立訓練、就労移行支援または就労継続支援(以下「就労移行支援等」)を利用し、通常の事業所に新たに雇用された障害者が職場に定着できるよう支援します。企業、障害福祉サービス事業者、医療機関などと連携し、雇用に伴う生活や社会生活の課題に対応する相談・指導・助言を提供します。
まとめ
就労継続支援A型は、障害のある方が安定した収入を得ながら働ける支援制度です。雇用契約を結ぶため最低賃金が保証され、社会保険の加入も可能です。働きながらスキルを身につけることができ、一般就労へのステップとして活用されるケースも多くあります。また、職場環境が支援付きであるため、体調や障害特性に合わせた働き方が可能で、無理なく就労を継続できるのが特徴です。利用料は世帯収入に応じた上限額が設定されており、経済的負担を抑えながら利用できる仕組みとなっています。