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就労継続支援B型の報酬を徹底解説|基本報酬と加算・減算のポイント

障害福祉サービス

 就労継続支援B型の報酬には、「平均工賃月額」と「生産活動への参加」の2つの評価体系があり、事業所ごとに年度単位で選択できます。さらに、基本報酬に加えて、利用者の支援状況や事業所の運営体制に応じた加算・減算が適用される仕組みになっています。

本記事では、就労継続支援B型の報酬体系について詳しく解説します。

  1. 基本報酬
    1. 「平均工賃月額」に応じた報酬体系
      1. 就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)6:1      
      2. 就労継続支援B型サービス費(Ⅱ)7.5:1    
      3. 就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)10:1
    2. 「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系
      1. 就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)6:1
      2. 就労継続支援B型サービス費(Ⅴ)7.5:1               
      3. 就労継続支援B型サービス費(Ⅵ)10:1
  2. 加算
    1. 福祉専門職員配置等加算
    2. 視覚・聴覚言語障害者支援体制加算
    3. 高次脳機能障害者支援体制加算
    4. 重度者支援体制加算
    5. 初期加算
    6. 訪問支援特別加算
    7. 欠席時対応加算
    8. 就労移行支援体制加算
    9. 就労移行連携加算
    10. 目標工賃達成指導員配置加算
    11. 目標工賃達成加算
    12. 医療連携体制加算
    13. 利用者負担上限額管理加算
    14. 食事提供体制加算
    15. 送迎加算
    16. 障害福祉サービスの体験利用支援加算
    17. 在宅時生活支援サービス加算
    18. 社会生活支援特別加算
    19. 地域協働加算
    20. ピアサポート実施加算
    21. 緊急時受入加算
    22. 集中的支援加算
    23. 処遇改善加算
  3. 減算
    1. 定員超過利用減算
    2. サービス提供職員欠如減算
    3. サービス管理責任者欠如減算
    4. 個別支援計画未作成減算
    5. 短時間利用減算
    6. 身体拘束廃止未実施減算
    7. 虐待防止措置未実施減算
    8. 業務継続計画未策定減算
    9. 情報公表未報告減算
  4. まとめ

基本報酬

 就労継続支援B型の基本報酬は、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)~(Ⅵ)の6区分に分類されます。報酬の決定基準には、利用者の工賃額を基準とする仕組みと、工賃額に依存せず、就労や生産活動への参加を評価する仕組みの2種類があります。

「平均工賃月額」に応じた報酬体系

就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)~(Ⅲ)

 利用者の工賃額を基準に報酬が決定される仕組みです。具体的には、事業所の利用者が受け取る平均工賃の水準に応じて、報酬単価が変動します。この体系では、工賃が高いほど報酬単価も高くなるため、事業所は利用者の工賃向上を目指すインセンティブが働きます。一方で、工賃向上が難しい事業所や利用者にとっては、報酬が低くなる可能性があるため、別の報酬体系(「利用者の就労や生産活動等への参加等」を評価する体系)を選択することもできます。

就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)6:1      

就労継続支援B型サービス費(Ⅱ)7.5:1    

就労継続支援B型サービス費(Ⅲ)10:1

「利用者の就労や生産活動等への参加等」をもって一律に評価する報酬体系

就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)~(Ⅵ)

 利用者の工賃額に依存せず、就労や生産活動への参加そのものを評価する仕組みです。従来の報酬体系では、平均工賃月額に応じて報酬が決まっていましたが、この新しい体系では、工賃額が低くても、地域との協働や生産活動への積極的な参加が評価されるようになっています。この体系を選択した事業所は「地域協働加算」や「ピアサポート実施加算」などの加算を受けることができ、地域社会との連携や利用者の社会参加を促進する取り組みが評価されます。

就労継続支援B型サービス費(Ⅳ)6:1

就労継続支援B型サービス費(Ⅴ)7.5:1               

就労継続支援B型サービス費(Ⅵ)10:1

平均工賃月額の算定方法

ア 前年度における工賃支払総額を算出

イ 前年度における開所日1日当たりの平均利用者数を算出

  前年度の延べ利用者数÷前年度の年間開所日数

ウ 前年度における工賃支払総額(ア)÷前年度における開所日1日当た 

  りの平均利用者数(イ)÷12月により、1人当たり平均工賃月額を算出

加算

 加算は事業所の支援体制や利用者の状況に応じて報酬が増額される仕組みで、就労継続支援B型の加算には、次のようなものがあります。

福祉専門職員配置等加算

 社会福祉士や精神保健福祉士などの福祉専門資格を持つ職員を、一定割合以上配置している事業所に適用される加算です。専門的な知識と技術を活かした支援を提供することで、利用者の生活の質の向上につながります。

視覚・聴覚言語障害者支援体制加算

 視覚・聴覚・言語障害のある利用者が円滑に生活できるよう、コミュニケーション支援や環境整備を強化した事業所に適用される加算です。点字対応、手話通訳、拡大読書器の導入など、利用者のニーズに応じた支援を行います。

高次脳機能障害者支援体制加算

 事故や病気による脳損傷により高次脳機能障害を抱える利用者に対し、専門的なリハビリや生活支援を提供する事業所に適用される加算です。記憶障害や注意障害への対応を強化し、日常生活の安定を支援します。

重度者支援体制加算

 日常生活において高度な支援が必要な重度障害のある利用者に対し、支援を強化している事業所に適用される加算です。例えば、食事や入浴介助、医療的ケアなど、より手厚い支援の提供が求められます。

初期加算

 新規利用者の支援強化を目的とし、利用開始から30日間適用されます。1日につき30単位が加算され、過去3か月以内に同じ事業所を利用していないことが条件です。ただし、欠席日は加算対象外となり、同一敷地内での転所には適用されません。

訪問支援特別加算

 利用者が連続5日以上通所できない場合に、居宅訪問で相談援助を行った際に算定される加算です。

欠席時対応加算

 急病などで利用者が欠席した際に、事業所が相談援助や連絡調整を行った場合に算定される加算です。月4回まで適用可能で、欠席の事前連絡と対応記録の作成が必要です。

就労移行支援体制加算

 就労継続支援B型の利用者が企業等へ就職し、6か月以上継続勤務した場合に算定される加算です。前年度において、事業所の支援を受けた利用者が1人以上就職し、継続勤務していることが条件となります。

就労移行連携加算

 就労継続支援B型の利用者が就労移行支援へ移行する際に、事業所が連絡調整や情報提供を行った場合に算定される加算です。

目標工賃達成指導員配置加算

 就労継続支援B型の利用者の工賃向上を支援する職員を配置した場合に算定される加算です。工賃向上計画を作成し、目標達成に向けた支援を実施することが条件であり、就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)と(Ⅳ)のみ算定可能です。

目標工賃達成加算

 目標工賃達成指導員配置加算を算定している事業所が、工賃向上計画の目標額を達成した場合に適用される加算です。就労継続支援B型サービス費(Ⅰ)(Ⅳ)のみ対象となります。

医療連携体制加算

 医療機関と連携し、利用者に適切な医療的ケアを提供する場合に算定される加算です。看護師の配置や医療機関との連携体制の確保が求められ、利用者の健康管理や医療的支援の充実を図ります。

利用者負担上限額管理加算

 利用者負担上限額管理加算は、利用者の自己負担額を適切に管理する事業所に適用される加算です。複数の事業所からサービスを受ける利用者に対し、負担額が上限を超えないよう調整・管理することを目的としています。

食事提供体制加算

 収入が一定額以下の利用者に、栄養バランスの取れた食事を提供する事業所に適用される加算です。管理栄養士の関与や適切な調理環境の整備が算定要件となります。

送迎加算

 事業所が利用者の居宅や指定場所まで送迎を行った場合に算定される加算です。送迎の頻度や利用者数に応じて、送迎加算(Ⅰ)・(Ⅱ)に区分されます。

障害福祉サービスの体験利用支援加算

 利用者が他の障害福祉サービスを体験利用する際に、現在の事業所が相談援助や連絡調整を行った場合に算定される加算です。体験利用の期間に応じて、加算(Ⅰ)・(Ⅱ)に区分されます。

在宅時生活支援サービス加算

 通所が困難な利用者が在宅で就労支援を受ける際に算定される加算です。市町村が在宅支援の必要性を認めた場合に適用されます。

社会生活支援特別加算

 医療観察法対象者や刑務所出所者などの社会復帰を支援する事業所に適用される加算です。適切な支援を行うために、精神保健福祉士などの専門職の配置や訪問支援の実施が求められます。

地域協働加算

 就労継続支援B型の利用者が地域の生産活動に参加し、地域住民や企業と協働する場合に算定される加算です。「利用者の就労や生産活動等への参加」をもって一律に評価する報酬体系を選択した場合のみ取得できます。

ピアサポート実施加算

 障害のある方同士が互いに支え合う「ピアサポート」を実施している事業所に適用される加算です。共通の経験を持つ利用者同士が交流し、助け合うことで、社会的な孤立を防ぎ、自立を促進する効果が期待されます。この加算は、「利用者の就労や生産活動等への参加」をもって一律に評価する報酬体系を選択した場合のみ取得できます。

緊急時受入加算

 障害の特性に起因する緊急事態が発生した際に、事業所が夜間支援を提供した場合に算定される加算です。         

集中的支援加算

 強度行動障害を有する利用者の状態が悪化した際に、事業所が専門的な支援を集中的に提供した場合に算定される加算です。

処遇改善加算

 福祉・介護職員の待遇向上を目的とした加算で、賃金改善やキャリアパス制度の整備が要件となります。

減算

 減算は、事業所の運営体制や支援の適正性に問題がある場合に適用され、報酬が減額される仕組みです。就労継続支援B型の減算には、次のようなものがあります。

定員超過利用減算

 事業所の定員を超えて利用者を受け入れた場合に適用される減算です。適正なサービス提供体制が維持できない状況では、支援の質が低下するため、報酬が減算されます。利用者の快適な生活環境を確保するため、定員を遵守することが重要です。

この減算は、1日あたりの利用実績や直近3ヶ月間の平均利用者数が定員を超えた場合に適用され、報酬単位数が一定割合減算されます。

サービス提供職員欠如減算

 利用者へ適切な支援を提供するための職員配置基準を満たしていない事業所に適用される減算です。例えば、必要な人数の職員を確保できていない場合、支援の質が低下するため、報酬が減算されます。

サービス管理責任者欠如減算

 サービス管理責任者が不在、または業務を適切に遂行できていない場合に適用される減算です。サービス管理責任者は、利用者の支援計画の策定や職員の指導を担う重要な役割を果たすため、その不在は支援の質に大きな影響を与えます。

個別支援計画未作成減算

 利用者ごとの個別支援計画が適切に作成されていない場合に適用される減算です。個別支援計画は、利用者のニーズに応じた適切なサービスを提供するための指針となるため、計画が作成されていない場合、サービスの質が低下し、報酬が減算されます。

短時間利用減算

 「利用者の就労や生産活動等への参加等」の報酬体系を採用している事業所では、直近3か月の平均利用時間が4時間未満の利用者が全体の50%以上の場合、全利用者の基本報酬が減算されます。ただし、障がい特性などの理由で短時間利用が避けられない場合は、減算の対象外となることがあります。

身体拘束廃止未実施減算

 利用者への身体拘束を適正に管理・廃止する取り組みが行われていない場合に適用される減算です。福祉サービスでは身体拘束を最小限に抑え、利用者の自由を尊重することが求められます。適正な手続きなしに身体拘束を行っている場合、報酬が減算される可能性があります。

虐待防止措置未実施減算

 虐待防止のための研修や規程が整備されていない事業所に適用される減算です。職員への定期研修を実施し、虐待防止のルールを明確に定めることで、利用者の安全を確保することが求められます。

業務継続計画未策定減算

 災害時の業務継続計画(BCP:Business Continuity Plan)が策定されていない場合に適用される減算です。感染症や自然災害などの緊急時に適切な対応が取れない事業所では、利用者の安全確保が難しくなるため、報酬の減算対象となります。

情報公表未報告減算

 事業所の運営情報を適切に公表・報告していない場合に適用される減算です。透明性の確保は、利用者やその家族が安心してサービスを利用できる重要な要素であり、事業所の信頼性にも関わるため、適切な情報公開が求められます。

まとめ

 就労継続支援B型の報酬体系は、「平均工賃月額」と「生産活動への参加」の2つの評価軸で構成され、事業所は年度単位で選択できます。工賃基準では利用者の工賃額向上を評価し、報酬単価が変動する仕組みである一方、生産活動基準では就労や地域協働への参加を評価する仕組みになっています。

加算には、「目標工賃達成指導員配置加算」「地域協働加算」「就労移行支援体制加算」などがあり、支援の充実度に応じて報酬が増額されます。一方で、「定員超過利用減算」「短時間利用減算」「サービス管理責任者欠如減算」などの減算もあり、事業所には適切な運営体制の維持が求められます。

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