前回、悪質な事業者の参入防止と適正運営を目的とした「就労継続支援事業所向けのガイドライン」について解説しました。今回はその続報として、先日厚生労働省より示された「令和8年度における臨時応急的な見直し」に基づく最新のアップデート情報をお届けします。
今回の見直しでは、これまでの就労系だけでなく、グループホームや障害児通所支援(児発・放デイ)についても、自治体が審査・指導を行うための指針が大幅に強化されています。
令和8年度における臨時応急的な見直し
1. 就労継続支援:生産活動の「実態」と「代表者の知識」が鍵
前回の記事で紹介した「新規指定時の厳格なチェック」は、さらに具体的になっています。
- コンサル任せの禁止を明文化:
指定申請時の面談は、委託先のコンサルタントや代理人ではなく、必ず法人の代表者、事業所の管理者、サービス管理責任者等(法人の代表者等)に対して行われることが改めて徹底されます。
- 不適切な活動の具体例:
生産活動と称して、eスポーツや植物の水やりを数回行うだけ、麻雀教室での手伝いや所定の場所に居るだけといった活動は、公費による就労支援として適さない可能性があると明記されました。
- 生産活動シートの徹底活用:
自立支援給付費を実質的に賃金・工賃に充てていないか、取引先情報や収支見込みを入念に確認する「生産活動シート」が審査の柱となります。
2. 共同生活援助(グループホーム):地域に開かれた「透明性」の確保
今回新たに、グループホーム向けのガイドラインも策定されました。
- 地域連携推進会議の義務化:
おおむね1年に1回以上、地域住民や市町村担当者等を交えた会議を開催し、運営状況を報告して助言を聴く必要があります。
- 住居への訪問見学:
会議の構成員が全ての住居を実際に見学することで、外部の目による透明性を確保することが求められます。
- 自己チェックシート:
事業所自身による評価と公表に加え、地域からの客観的な助言を受ける体制が構築されます。
3. 児童発達支援・放課後等デイサービス:「5領域」の網羅
障害児支援では、単なる「預かり」ではない「発達支援」の質が問われます。
- 総合的な支援の「見える化」:
本人支援の5領域(健康・生活、運動・感覚、認知・行動、言語・コミュニケーション、人間関係・社会性)すべてを網羅した支援プログラムを作成し、公表しなければなりません。
- 習い事のみの指導はNG:
ピアノや絵画、学習支援等「のみ」を提供することは、公費負担のサービスとして相応しくないとされ、アセスメントに基づき5領域とつなげることが必須となります。
4.新規参入には「報酬の特例」も
今回のガイドライン強化は、単なる指導の徹底に留まりません。令和8年度からは、事業所数が急増しているサービス(就労継続支援B型、共同生活援助(介護サービス包括型・日中サービス支援型)、児童発達支援、放課後等デイサービス)について、新規事業所に限り基本報酬を一定程度引き下げる「報酬単価の特例」も検討されています。
これは、単に報酬を下げるだけでなく、自治体側の審査体制を強化することで「不適切な事業所の参入を水際で防ぐ」という国の強い姿勢の表れです。今後は、ガイドラインに基づいた適切な指定審査が、これまで以上に厳格に運用されることになると予想されます。
まとめ
「特段の知識や経験がなくても、高収益が実現できる」といった謳い文句による安易な開設勧誘が問題視された結果、国は全方位的にガイドラインを整備し、自治体の「物差し」を強化しました。
今後の事業運営には、法的な基準を守るだけでなく、「ガイドラインに沿った質の高い支援」をいかに言語化・数値化して説明できるかが、これまで以上に厳しく問われることになります。



