令和6年度の報酬改定により、「情報公表未報告減算」が新たに導入されました。情報公表制度に基づく報告を怠ると、基本報酬から減算される可能性があるため、制度の仕組みや届出の流れを正しく理解しておくことが重要です。本記事では、情報公表制度の概要、未報告による減算の仕組みなどをわかりやすく解説します。
制度の概要
障がい福祉サービス等を提供する事業者数が大幅に増加する中、障がい児者が個々のニーズに応じて良質なサービスを選択できるよう、利用者の権利擁護とサービスの質の向上に資する情報提供の環境整備を目的として、平成30年4月に「障害福祉サービス等情報公表制度」が施行されました。同年9月からは、独立行政法人福祉医療機構が運営する「障害福祉サービス等情報公表システム(WAMNET)」の運用も開始されています。
この制度は、平成28年5月に成立した改正障害者総合支援法および児童福祉法に基づき、事業者に対してサービス内容等の報告義務を課すとともに、都道府県知事等がその内容を公表する仕組みとして創設されました。
指定障がい福祉サービス事業者および障がい児通所支援事業者は、障害者総合支援法第76条の3第1項および児童福祉法第33条の18第1項の規定により、「障害福祉サービス等情報」を都道府県等へ報告する必要があります。

(厚生労働省ホームページより引用)
情報公表未報告減算とは?
障害福祉サービス等情報公表制度に基づく報告が未実施の場合、基本報酬から一定額が減算される仕組みです。事業者は、定められた期間内に情報公表システム(WAMNET)を通じて必要な情報を報告する義務があり、未報告の場合は減算対象となります。
対象サービス
全てのサービス
減算単位
| 対象サービス | 減算割合 |
| 療養介護、生活介護、施設入所支援、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)(宿泊型自立訓練を含む。)、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援、共同生活援助(ただし、生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)(宿泊型自立訓練を除く。)、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援については、指定障害者支援施設が行うものに限る。) | 所定単位数の10%を減算 |
| 居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、生活介護、自立生活援助、短期入所、重度障害者等包括支援、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練) (宿泊型自立訓練を除く。)、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労定着支援、計画相談支援、地域移行支援、地域定着支援(ただし、生活介護、自立訓練(機能訓練)、自立訓練(生活訓練)、就労継続支援A型、就労継続支援B型、就労移行支援については、指定障害者支援施設が行うものを除く。) | 所定単位数の5%を減算 |
減算要件
- 情報公表対象サービス等情報に係る報告が適切に行われていない場合に減算されます。
減算期間:その翌月から報告を行っていない状況が解消されるに至った月まで
留意点
- 減算の対象となる単位数は、加算前の「基本報酬の所定単位数」であり、加算込みの合計単位数に対して10%(または5%)を引くわけではありません。
- 複数の減算がある場合は、まず各減算を適用した後の「減算後基本報酬所定単位数」に対して10%(または5%)を算出し、その分をさらに減算します。
まとめ
情報公表未報告減算は、報酬に直接影響する制度であり、報告の未実施や手続きの遅れは事業所経営にとって大きなリスクとなります。令和6年度の報酬改定で新設されたこの減算は、すべての障がい福祉サービス事業者が対象です。情報公表制度の仕組みや報告手順を正しく理解し、WAMNETを通じた登録・更新を確実に行うことが求められます。なお、提出方法や反映時期は自治体ごとに異なる場合があるため、自治体の定める方法に従って、確実に報告を行いましょう。


