2025年11月28日に厚生労働省より、障害保健福祉に関する最新の補正予算案(総額646億円)が公開されました。今回の予算案では、現場が直面している「人手不足」や「物価高騰」、そして「デジタル化」といった喫緊の課題に対し、非常に具体的な支援策が盛り込まれています。
厚生労働省資料:障害保健福祉に関する令和7年度補正予算案の概要
障害保健福祉に関する令和7年度補正予算案の概要
特に注目すべき4つのポイントに絞って解説します。
1. 待ったなしの「賃上げ支援」:439億円
現在、障害福祉の現場では他職種への人材流出が深刻な課題となっています。これに歯止めをかけるため、令和8年度の報酬改定を待たずに、緊急的な賃上げ支援が行われます。
- 支援内容: 障害福祉従事者に対し、月額1.0万円相当の賃上げを支援
- 実施時期: 令和7年12月から令和8年5月まで
- 対象: 処遇改善加算を取得(予定含む)している幅広い事業所
この施策は、職員の定着率向上と、安定したサービス提供体制を維持するための強力な後押しとなります。
2. テクノロジーで負担を軽減「省力化・効率化」:15億円
限られた人員で質の高いケアを維持するため、ロボットやICTの導入が加速されます。
- テクノロジー導入補助: 介護ロボット、見守りセンサー、AIカメラ、業務効率化ソフトなどの導入費用を補助。
- サポート体制の整備: 都道府県単位で、生産性向上に関する相談ができる「サポートセンター」の運営を支援します。
現場の事務負担や身体的負担を減らし、「人にしかできないケア」に集中できる環境づくりを目指しています。
3. 物価高騰・災害への備え
厳しい経営環境にある事業所を守るための施策も継続・強化されます。
- 物価高騰対策: 電気代やガス代、食材料費の高騰に対し、「重点支援地方交付金」の活用を促進。補装具事業者の支援も含まれています。
- 防災対策(118億円): 障害者施設の耐震化、非常用発電機の整備、スプリンクラーの設置などを推進し、利用者の安全を確保します。
- 心のケア: 能登半島地震等の被災者に対し、専門家による心理的支援(DPAT等)を継続します。
4. 障害福祉のDXと「就労選択支援」
新しいサービスや仕組みについても予算が割り当てられています。
- 自治体事務のデジタル化: 障害者手帳の申請や事業者の届出などをオンラインで完結できるよう、システムの共通化・標準化を進めます。
- 就労選択支援の質向上: 令和7年10月から始まった「就労選択支援」が全国で均一かつ高品質に実施されるよう、支援員の養成研修を実施します。
まとめ
今回の補正予算案は、「働く人の処遇改善」と「現場のデジタル化」を両輪で進めることで、障害福祉サービスの持続可能性を高めようとする強い意向が感じられます。 特に12月からの賃上げ支援は、一定の評価はできるものの、物価高騰や他産業との格差を考慮すると、現場の期待を十分に満たすには至っていないのが実情です。今後、これらの予算が適切に執行され、利用者の方々がより安心して過ごせる環境の構築に繋がっていくことが求められます。


