厚生労働省のガイドラインに基づき、就労継続支援A型・B型事業所の適正な運営を支援するための「生産活動シート」の記入方法と、チェックすべきポイントを詳しく解説します。
1. 生産活動シート作成の背景と目的
現在、就労継続支援の現場では、生産活動収支が利用者に支払う賃金・工賃を下回り、給付費(税金)を賃金に充ててしまうといった不適切な事例が課題となっています。
このシートは、以下の目的で作成されました。
実態把握の効率化:
指定権者が事業所の運営状況を効率的に確認できるようにする。
改善ツールの提供:
事業所自身が運営方針や生産活動の改善を検討する際に役立てる。
2. 項目別のチェックポイント
①事業所概要の確認
まずは基本情報を正確に把握します。
定員と契約者数:
実際の稼働状況を確認するため、定員に対する利用契約者数をチェックします。
【A型】の追加確認: 契約者数が多い場合は、1日平均利用者数や、施設内・外での作業人数を把握し、具体的な活動をイメージします。
②生産活動内容と収入の妥当性
活動の多様性:
リスク分散のため、活動内容は複数あることが望ましいとされています。
単価のチェック:
作業内容に対して単価が著しく高くないか、「支援者人時売上」を算出して比較します。
根拠資料:
請負契約書や請求書など、収入の根拠となる資料の提出・確認が必要です。
③取引先との関係性(関連企業等の判断)
不当な売上計上を防ぐため、主要取引先との関係を注視します。
売上構成比:
売上高上位3位までの取引先を記入します 。
関連企業等の判定:
親会社、子会社、関連会社等に該当するかを確認します 。議決権の保有比率だけでなく、「実質支配力基準」や「影響力基準」に基づき、役員派遣や資金関係も加味して判断されます。
④収支と余剰金の確認
支出の計上: 生産活動にかかる支出がゼロになっていないか確認します。ゼロの場合は、全て福祉会計から支出されていないか精査が必要です。
余剰金のチェック:
生産活動収入 - (経費 + 賃金・工賃総額)」がプラスであることを確認します。
マイナスの場合:
余剰金がマイナスの場合、訓練等給付費を賃金に充てている可能性があるため、詳細な理由の確認が求められます。
3. 月次損益計算による点検(分析指標)
年間の数字を1か月あたりに換算し、より具体的な状況を把握します。
賃金・工賃カバー率:
(生産活動収支 ÷ 支払賃金・工賃)で算出 。
100%以上: 良好
80%未満: かなり足りない(改善が必要な状況)
利用者1人当たりの余剰金:
この金額がマイナス(特にB型で▲5,000円〜▲10,000円以上)の場合、基準を遵守していない可能性が考えられます。
4. 注意すべき不適切なケース
生産活動の実態を伴わずに、以下のような行為で不当な収入を得ることは、不正会計に該当する可能性があります。
架空取引:
実態がないのに取引があったように見せかける。
循環取引:
複数企業で商品・サービスを回し、売上を水増しする。
不当な高単価設定:
関連企業等との間で、市場価格とかけ離れた単価で取引を行う。
【留意事項】
生産活動シートは「問題の有無を検知すること」を主目的とした簡便なツールです。これだけで全てを判断せず、必要に応じて日報の確認やヒアリング、実地確認を組み合わせることが重要です。
まとめ
生産活動シートは、単なる「提出書類」ではありません。事業所が健全な運営を行い、利用者の皆様に適切な賃金・工賃を支払い続けるための「健康診断書」のようなものです。
不適切な会計処理や実態のない取引は、結果として事業の継続を危うくし、大切な利用者の居場所を奪うことにもつながりかねません。今回のガイドラインを参考に、以下の3点を定期的に振り返ってみてください。
- 「生産活動収支」だけで賃金・工賃を賄えているか?
- 取引先や単価設定は、客観的に見て妥当と言えるか?
- もし赤字が出ているなら、その根本原因と改善策は何か?
まずは自事業所の現状をシートで可視化することから始めてみましょう。もし運営上の不安や判断に迷う箇所があれば、早めに専門家や指定権者へ相談し、透明性の高い事業運営を目指していくことが、利用者・スタッフ双方の安心につながります。


