感染症への備えは、障がい福祉サービスにおいても欠かせない課題です。特に入所系施設では、集団生活の特性上、感染拡大のリスクが高く、平時からの対策と医療機関との連携体制が求められます。障害者支援施設等感染対策向上加算は、感染対策に関する実地指導を受けるなど、施設が医療機関と連携しながら感染症対応力を高めていることを評価する仕組みです。本記事では、加算の算定要件や実地指導の内容について、わかりやすく解説します。
障害者支援施設等感染対策向上加算とは?
医療機関と連携し、感染症への対応力の向上に係る取り組みを実施している場合に算定できる加算です。
対象サービス
施設入所支援、共同生活援助、福祉型障害児入所施設
加算単位
障害者支援施設等感染対策向上加算Ⅰ 10単位/月
障害者支援施設等感染対策向上加算Ⅱ 5単位/月
算定要件
障害者支援施設等感染対策向上加算Ⅰ
1. 新興感染症対応体制の確保
第二種協定指定医療機関と連携し、新型インフルエンザ等感染症・指定感染症・新感染症の発生時に対応できる体制を確保していること。
2. 一般感染症対応の連携体制
協力医療機関等(指定障害者支援施設基準第46条第1項に規定)と感染症(新興感染症を除く)の発生時対応について事前に取り決め、発生時には連携して適切に対応していること。
3. 院内感染対策研修への参加
感染対策向上加算または外来感染対策向上加算の届出を行っている医療機関等が実施する院内感染対策に関する研修・訓練に、年1回以上参加していること。
障害者支援施設等感染対策向上加算Ⅱ
感染対策向上加算の届出を行った医療機関から、3年に1回以上、施設内で感染者が発生した場合の対応に関する実地指導を受け、都道府県知事に届け出をしていること。
留意点
障害者支援施設等感染対策向上加算Ⅰ
- 事業所における平時からの感染対策の実施や、感染症発生時に感染者の対応を行う医療機関との連携体制を評価するものであること。
- 事業所の感染対策担当者が、感染対策向上加算または外来感染対策向上加算の届出医療機関、または地域医師会が実施する院内感染対策に関する研修・訓練・カンファレンスに、少なくとも年1回参加し、指導・助言を受けること。
- 障害者支援施設は、入所者が新興感染症に感染した際に備えて、診療所または病院である第二種協定指定医療機関と連携し、相談・診療・入院の要否判断などの対応体制を確保していることが、加算算定の要件となります。
- 季節性インフルエンザ、ノロウイルス、新型コロナウイルスなど、障害者支援施設等で流行しやすい感染症に備え、協力医療機関等と連携し、感染した入所者に適切な医療を提供できる体制が構築されていることが求められます。
障害者支援施設等感染対策向上加算Ⅱ
- 感染対策向上加算の届出を行っている医療機関から、少なくとも3年に1回以上、施設内で感染者が発生した際の感染制御に関する実地指導を受けている場合に、月1回算定されます。
- 実地指導は、当該医療機関に設置された感染制御チームの専任の医師または看護師等が行うことが想定されています。
まとめ
障害者支援施設等感染対策向上加算は、感染症への備えを制度的に支援する重要な加算です。医療機関との連携や実地指導、研修参加など、日頃の取り組みが評価される仕組みとなっており、入所者の安全確保と職員の感染対応力向上につながります。算定にあたっては、要件の確認と医療機関との連携体制の整備が必要となります。制度の趣旨を踏まえ、実効性のある感染対策を継続的に推進していきましょう。


